精密機器である画面を直接曲げて縦に折りたたむ狂気のスマホ。Galaxy Z Flipがとうとう発売された。
先行して発売された縦折スマホ「Motorola RAZR」が、折りたたんでいると壊れてしまうという恐ろしい結果となったため、発表レビューではかなり不安と書いたのだが、なんとGalaxy Z Flipは初日分が完売してしまったらしい。
私は常々日本人は保守的だと思っていたのだが、どうやら勘違いだったようだ。思っていた以上に日本人は冒険好きだった。ロックな同胞たちを私は誇らしく思う。
そして私も店頭でこの端末を触ることが出来たので、改めてレビューを書こう。
結論としては、思った以上にまともな端末で驚いたが、やはり画面の折り目と強度が滅茶苦茶気になって、とても手を出せない端末だと思った。
スペックと評価
項目 | 詳細 | 評価 |
発売日 | 2020/2/28 | - |
値段(コスパ) | 179360円 | ★☆☆☆☆ 正気じゃない。Motorora RAZRよりはマシだが。 |
SoC(処理性能) | Snapdragon 855+ | ★★★★★ ハイエンド中のハイエンド。iPhone11と同等 |
メモリ | 8GB | ★★★★☆ かなりの容量 |
バッテリー(電池) | 3300mAh | ★★☆☆☆ 少な目ではあるが、本体の形状を考えると頑張った。Motorora RAZRより(ry |
写真などの保存容量 | 256GB | ★★★★★ ハイエンドに相応しい容量! |
画面の綺麗さ | 有機EL | ★★★★☆ 綺麗なんだけど、ヒンジの所が凹んでいるのが気になる。あと表面の強度が微妙 |
解像度 | 2636x1080 | ★★★★☆ なかなか広い。Motorora RAZRより(ry |
防塵防水 | なし | ☆☆☆☆☆ この形状で防塵防水は無理があるのだろう |
カメラ(画素数) | 広角:1200万 超広角:1200万 内:1000万 | ★★★★☆ 画質はとても綺麗。ハイエンドのカメラとしては機能が少ない気がする |
オプション | ・指紋認証 ・顔認証 ・イヤホン ・充電アダプタ ・ケース | ★★★☆☆ 流石にサムスンはオプションが充実している。おサイフケータイが無いのは残念 |
★合計 | 50点満点中 | 32点 |
性能はiPhone11にも劣らない
まず素晴らしいのは、この端末の性能だ。精密機器である画面を折り曲げるという狂気の仕様を有しながら、性能はiPhone11にも劣っていない。
メモリ、保存容量、解像度と基本的なスペックは他のハイエンド端末と同等かそれ以上の高性能となっている。
約18万円もすればそれは当然だろう、と思うかもしれないが、実はこれは簡単なことではない。なぜなら、同じ縦折スマートフォンであるMotorola RAZRは、値段はほとんど同じながら、性能はミドルレンジスマホと同じくらいしかないからだ。このことから、いかに縦折スマートフォンの製作が難しく、Samsungの技術力が高いかわかると思う。
少なくともこの端末はハイエンドスマホとして他のスマホと同等以上に使える。それは本当にすごいことだ。
やはり画面の折り目が気になる
これは画面を折り曲げるという機構上どうしようもないのだろうが、画面の折り目に沿ってはっきりとわかる凹みがある。
本体から真正面に画面を見つめればそれほど気にならないのだが、基本的にスマホは傾けたりテーブルの上に置いたりして使うことも多い。そうなると画面がちょっと凹んでいるのはどうしても意識してしまう。
この凹みというか、折り曲げる際の遊びの部分があることで耐久性を高めているのだろうが、それなら最初から折り曲げなければいいのではないかと思わずにいられない。
パカパカしづらい
若い方はガラケーを触った事がない方も多いかもしれないが、アレは折りたたんで開く動作がとても心地よかった。
片手で大した力もいれずにパカッと開けて、ガッチリホールドする。そこに不安定な部分など存在しない。スマートではないかもしれないが、あれはあれで機械的な楽しさがあった。これはいわば、自動車のシフトチェンジの楽しさに近いと思う。マニュアル車がオートマ車に変わっていったように、携帯電話も利便性を求めてスマートフォンへと置き換えられていったのだ。
そのガラケーと比べてGalaxy Z Flipはどうか。残念ながら、片手で力を入れずにパカッと開くことは出来なかった。力を入れればやれなくもないが、それはそれで耐久性に不安がある。ガラケーと似てはいても、使い心地は劣るのが非常に残念だった。
表面の耐久性が滅茶苦茶気になる
一番気になるのが、画面の表面の耐久性だ。以前からネットで画面の耐久性について噂を聞いていたのだが、聞いていた通り画面の耐久性はかなり悪いと感じた。
ネットで囁かれていたのは、「Galaxy Z Flipの画面は爪を立てただけで跡が残って消えない」という物だ。Galaxy Z Flipの表面は新素材のガラスで出来ているので、耐久性は抜群というのがSamsungの触れ込みだったのだが、実際には簡単に傷がついた。これはどういうことなのかとSamsungに問い合わせたところ、どうやらGalaxy Z Flipはガラスの上に樹脂のようなものでコーティングを施しているらしく、傷はその部分についたものとのことだった。
じゃあ本当の画面に傷はついていないから安心だね……なんてSamsungの言うことを信じる純朴な方はそれほどいまい。結局表面に施されたコーティングは剥がせないのだから、画面には消えない跡がずっと残ることになる。これではせっかく採用した新素材のガラスが全く無意味だ。なんで表面に傷のつきやすいコーティングなんて施したんだ? 取り外し可能な保護フィルムじゃダメだったのか?
まあ噂は噂だ。私は実機をみて確かめることにした。そして本体を開いた瞬間に事実だと確信した。私が耐久性を確かめるまでもなく、画面には他の誰かがつけたであろう傷が無数に残っていたからだ。私は店頭のサンプルがこんなに傷だらけになっているのを見た事が無い。どれだけ大勢の人に触られても、普通のスマホはここまで傷がつかない。
私と同じように耐久性を確かめようとした方が大勢いたのだろう。もちろん店頭のサンプルだから針金やら釘やらで傷をつけたわけではあるまい。そんなことをすれば店から訴えられる。
噂通り、爪を立てるか、それに相当する負荷を与えただけで傷がつくくらい耐久性は低かった。
使ってみてやっぱり思うのは、縦に折り曲げる必要性が全くないということ
最後に、この端末の根本的な存在意義を問うことになってしまうが、そもそもスマートフォンを縦に折り曲げる必要性が全くない。
なぜなら、スマートフォンは本体その物が画面であり操作するためのインタフェースであるため、手に取っただけで使える状態であることが究極だからだ。つまり今の状態でスマホという物はすでに完成している。操作するために本体を開くというワンアクションが必要な縦折スマートフォンはそもそも必要性が無い。
それでも二画面スマホなら、開くことでより大きな画面を使うことが出来るという明らかな利点がある。それに対して縦折スマホはどうか。折り曲げると縦に小さくなるだけで、画面の広さは全く変わらない。ポケットからはみ出さなくなるくらいの利点しかないように思う。それにしたって、縦に折り曲げることでかえって厚みは増してしまう。それほど携帯性が向上するようには思えない。
結局、「折り曲げてパカパカする」ということに意味を見出せないと、この端末を買う価値が全くない。それですら、ガラケーの心地良いパカパカ感には劣る。そんな端末に約18万円という馬鹿にできない金額を出せるか? 私には無理だ。
以前Palm Phoneのレビューで書いたが、コスパが悪くても買うに値する価値という物は存在する。Palm Phoneのようなカッコいい端末は、たとえ値段が高くても買う価値があるのだ。しかし、残念ながら私はGalaxy Z Flipにその価値を見出せない。大してカッコいいともオシャレだとも思わないからだ。
「この端末は私にとって、買う価値がある」。そう確信できる人だけが、Galaxy Z Flipを手にすると良いだろう。スマホを選ぶ、いや、買うものを選ぶとは、結局はそういうことだ。